研究概要 |
介護保険下で達成すべきシステム課題を明らかにする為に、介護保険導入による高齢者のサービス利用行動変容と介護サービス供給への影響を調査した。介護保険導入前については、常時介護者がいる高齢者1024名を対象に、日常生活の自立度と年齢,性別,疾病,家族のケア能力,社会的支援などとの関連を分析した。(1)高齢者を前,中,後期に分類した場合、前期から後期になるに従って「自立」,「要援護」は減少し、「寝たきり」では後期が前期の約2倍であった。(2)「自立」,「要援護」は、男女がほぼ同じ割合であったが、「寝たきり」では女性が多かった。(3)97%の人が何らかの病気を持っていた。(4)家族構成は、7割が2世帯または3世帯家族,2割が高齢者同士の2人暮らし,1割が1人暮らしであった。家族構成によって自立度の割合に違いはなかった。(5)2世帯,3世帯家族の社会的支援の活用は、「通所サービス」の利用が4割と最も高く、その6割は「自立」,「要援護」の人であった。「在宅サービス」の利用は1割以下であった。「訪問入浴」利用者の9割,他の在宅サービス利用者の7割は「準寝たきり」,「寝たきり」の人であった。「福祉用具」は35%,「短期入所」は9%の利用で、「要援護」,「準寝たきり」,「寝たきり」が3割ずつを占めていた。2世帯,3世帯家族に対して、高齢者2人暮らしの社会的支援の活用は、「訪問介護」の利用が約2倍で、反面「訪問入浴」の利用が1/2であった。他のサービス利用はほぼ同じ割合であった。(6)主たる介護者は高齢者が過半数を占めていた。介護者の「健康状態」は、全体では7割が「健康」,3割が「不健康」であった。しかし、「自立」,「要援護」,「準寝たきり」の介護者に比べて、「寝たきり」の介護者は「不健康」の割合が多かった。また、2世帯,3世帯家族の介護者に比べて、高齢者2人暮らしの介護者は「不健康」の割合が多かった。(7)サービス利用の経験者では、利用利益の自己評価が全体的に高く、現在介護保険導入後の行動変容について分析中である。
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