研究概要 |
脳血管障害者や重度心身障害児(者)を対象に,継続して口腔ケアを実施することが嚥下性肺炎の予防や改善にどの程度効果的であるかを検索しながら,嚥下性肺炎の予防や改善に有効な口腔ケアの方法を開発することが本研究の目的である。本年度は以下の研究をおこなった。 1.経管栄養患者に対する就寝前のスポンジブラシによる口腔清拭の効果に関する研究 重度心身障害者病棟に入院中の重度心身障害者で嚥下障害により経管栄養中の患者15名を対象とした。従来1日1回の給吸ブラシによるブラッシングを行なっていたが,さらに就寝前に20倍イソジンガーグルを用いてスポンジブラシによる口腔清拭を行ない,口腔内細菌数の変動を,ケア改善前,1週間後,2週間後,3週間後,1ヶ月後,3ヶ月後,6ヶ月後に測定した。細菌数では,スポンジブラシによる口腔清拭の効果は得られなかった。1日1回十分ブラッシングを行なっておれば,就寝前のケアは影響しないことが示唆された。 2.重症心身障害児(者)施設における歯科治療体制に関する調査 入所者の口腔状態は,う歯や歯周病等があり歯科治療が必要である。高齢化が進むに従い口腔状態の悪化が予想され,治療体制のネットワークの重要性が高まってくるため,全国の重度心身障害者施設169ヶ所の歯科診療体制,歯科検診,歯科治療,口腔ケアの実際等に関する実態調査を実施した。その結果,施設の64.3%に歯科診療所は設置されていたが,歯科医の常勤は33.7%であり,診療日数は1日/週が37.4%であった。歯科検診については,84.6%のところで実施されていたが,1回/年定期的に実施されていたのは52.8%であり,治療および予防体制は不十分であり,整備が必要であることが示唆された。
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