研究概要 |
脳血管障害者や重度心身障害児(者)を対象に,継続して口腔ケアを実施することが嚥下性肺炎の予防や改善にどの程度効果的であるかを検索しながら,嚥下性肺炎の予防や改善に有効な口腔ケアの方法を開発することが本研究の目的であり以下のような研究を実施した。 1.口腔内細菌数と自覚感による口腔ケアの至摘時間の検討 健常者18名を対象に,1日のどの時間帯に口腔ケアを実施するのが最も効果的かを検討した結果,1日1回の場合は,確実に実行できる時間を決め,十分時間をかけて行えば,実施時間帯による効果の差はないことが示唆された。 2.口腔ケアの質改善による看護成果と課題 重度心身障害者で口腔ケアが困難でブラッシング法を改善した31名を対象とした。口腔状態等について改善前後3年間の経過を調査し比較検討を行なった。経管栄養群と経口摂取群の3年間の比較では,両群とも,発熱日数,点滴回数,5%割り引き医療費では減少傾向を示し,増加を抑制できた。本結果から,予防処置が受けられるネットワーク作りの必要性が示唆された。 3.経管栄養患者に対する就寝前のスポンジブラシによる口腔清拭の効果に関する研究 重度心身障害者で嚥下障害により経管栄養中の患者15名を対象とし,1日1回の給吸ブラシによるブラッシングに,就寝前にスポンジブラシによる口腔清拭を加え,口腔内細菌数の変動を測定した。細菌数では,スポンジブラシによる口腔清拭の効果は得られなかった。1日1回十分ブラッシングを行なっておれば,就寝前のケアは影響しないことが示唆された。 4.重症心身障害児(者)施設における歯科治療体制に関する調査 治療体制のネットワークの重要性から,全国の重度心身障害者施設169ヶ所の歯科診療体制,歯科検診,歯科治療,口腔ケアの実際等に関する実態調査を実施した。その結果,治療および予防体制は不十分であり,整備が必要であることが示唆された。
|