研究概要 |
肺気腫患者の栄養状態と呼吸機能および呼吸筋力について検討した.対象は安定期の肺気腫患者36名,男性32名,女性4名,年齢は70.6±5.2歳(56〜81歳)である.身体計測では,BMI(Body Mass Index),%IBW(Ideal Body Weight),体脂肪率とも1秒量800ml未満群が以上群より有意に低値を示した.また,BMI,%IBW,体脂肪率ともPaO_260Torr未満群が以上群よりも低い傾向を示したが有意差は認められなかった.血清蛋白では,アルブミン,プレアルブミン,トランスフェリンとも正常範囲にあり,レチノール結合蛋白は低値を示したが,1秒量800ml未満群と以上群,PaO_260Torr未満群と以上群で有意差は認められなかった.すわわち,やせは低酸素血症よりも閉塞性換気障害に関連しており,閉塞性換気障害が高度の者はやせも高度であるが,内臓蛋白の低下は軽度であった.また最大吸気口腔内圧は,BMI,%IBW,体脂肪率と正の相関を示した. 以上より,肺気腫患者では,栄養低下により呼吸筋力が低下し,換気障害が増悪することが推測された.肺気腫患者では気道抵抗の増大,横隔膜平低下による換気効率の低下などにより呼吸筋の酸素消費量増大するため,代謝が亢進し,やせが進行すると推測されている.肺気腫患者の呼吸困難の改善とQOLの向上のため,栄養状態の改善と呼吸リハビリテーションによる呼吸筋力の改善が重要であると思われた.
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