研究概要 |
平成12年度は,本研究の課題である「医療現場における看護事故のリスクマネジメントに関する研究」のうち,特に,「看護事故内容の記述・分析の手引き」を作成することに主眼をおき,なかでも,臨床現場においては,分析の基盤となる詳細なデータの記述方法をマスターすることが先決であるとの考えのもと,まず,データ収集の要所となるところを探った。 試行段階として,(1)ヒヤリ・ハットや看護事故の記述や報告書に関するスタッフへの指導援助を行った経験をもつ婦長や主任を含む看護婦によって提供されたデータ,(2)看護事故が引き起こされそうになったものの未発に防止できた経験をもつ看護婦によって提供されたデータ,および,(3)看護事故やミスを起こさないために,日々留意している具体的内容をもつ看護婦によって提供されるデータを収集し,それを基に分析を試みた。(1)では,必要かつ十分なデータとするための「指導・援助の難点とポイント」,(2)では,「未発に防止し得た場合の状況や行動」,(3)として,「予め留意している状況や行動」等を焦点に,それらに関する観点が明確に打ち出せるようなデータとするべく,試行調査と検討を繰り返した。 記述されたデータには限界があるため,協力病院の看護部長を通して何回かやり取りを行い,必要時インタビューを行って,可能な限り詳細なデータが得られるように繰り返し試行を重ね,質問紙を修正して再度信頼性のあるデータを収集することに努めた。現在も,上記の要所を明確にするべく,グランディッドセオリーの分析法を用い,データの収集と分析を繰り返している。未だ途中の段階であるが,ヒューマン・エラーの視点まで掘り下げた分析は,それ自体事故対策になること,また,リスクマネジメントの実行には,何よりも,適切なデータが必要であること,言い換えれば,事故やヒヤリ・ハットに遭遇した当事者が,事実として時系列的に詳細に表現することが肝要であるという認識を強め,上記の作業を繰り返している。
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