研究概要 |
平成13年度は,12年度に行った調査の結果に基づき「看護事故の記述・分析の手引き」の一環として「看護事故の記述・分析の枠組み」を作成し,さらに,その枠組みに事故の事例を適用して「看護事故の記述・分析のモデル」を作成した。 「看護事故の記述・分析の枠組み」は,事故防止の基本となる「看護事故の記述・分析」について実践現場の実情を調査した結果,医療界にリスクマネジメントのシステム化が導入され国レベルで取り組んでいるものの,未然事故を含む事故の報告書(様式)は未だ,「個人事故」の捕え方に止まる傾向にあり,「組織事故」の捕え方の「観点」や「範囲」が十分に意識化された報告書にはなっておらず,結果として事故の捕え方について両者が識別されていない,といった実態が明らかになり,それに基づき作成した。すなわち,必要な「観点」や「範囲」が必然的に網羅される枠組みとすることを目的に,4M-4Eマトリックス方式を一部改変して作成した。改変した個所は,4Mを詳細に記述する方法,とりわけ"MAN"にあたるMの個所の記述方法であり,ヒューマンエラーにかかわる内容を詳細に記述することが可能となるように修正した。 「看護事故の記述・分析のモデル」は,4M-4Eマトリックス方式を改変した「事故の記述・分析の枠組み」に,事故の事例を適用しモデルとして示したものである。事故の事例には,医療事故の報告書として公表されたもののなかから,事故の背景要因の範囲まで扱っている「注射器取り違え事故」についての「都立広尾病院の医療事故に関する事故調査委員会報告書-検証と証言-(1999)」で提示されたものを適用した。 今後は,作成した枠組みとモデルを現場で採用してもらい,実例をもって評価したいと考えている。但し,この種のデータを外部に出すことが倫理上の規制で非常に難しくなっており,評価するに際して困難を極めている現状である。
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