疼痛の緩和は看護において重要なケアの1つである。痛みは自律神経系に影響を及ぼすことが知られている。実験的に速い痛み(刺痛;pricking pain)を起こしたときの自律神経反応を指標に、従来から行われている疼痛緩和ケアの温罨法と冷罨法の疼痛緩和効果について実験を行った。 実験は健康な女性20名(20〜24歳)を対象とし、皮膚電気抵抗値(GSR、手掌部)、レーザードプラー血流計にて測定した皮膚血流量(BF、示指)を自律神経機能の指標とした。実験的疼痛は、電気刺激を上腕部と前腕部の2箇所にそれぞれ与え、pricking painを生じさせた。刺激強度は各被験者がそれぞれの部位で耐えうる最大強度を用い、そのときのGSRとBF反応(control)、また刺激部位を湯たんぽを用いて暖める温罨法(warming)あるい氷のうを用いて冷やす冷罨法(cooling)施行時のGSRとBFの反応の大きさを比較検討した。主観的な痛み感覚はVisual Analogue Scale(VAS)を用いて評価した。 前腕部、上腕部のいずれの部位への痛み刺激でGSRの有意な増加とBFの有意な減少がみられた。このことは、痛み刺激により反射性に交感神経活動が亢進したと考えられる。両部位において、刺激部位のcoolingにより、GSRおよびBFの反応は減少し、VASによる主観的な痛み感覚も減少した。逆に刺激部位のwarmingにより主観的な痛みの増加と共にGSRとBFの反応は増加した。このことは、coolingはpricking painに対しては自律神経反応ならびに痛み感覚両方において緩和効果があることを示している。それに対し、warmingは痛みを増強させるように作用し、pricking painのような痛みには効果はないと考えられた。
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