昨年度は皮膚電気反応(SCL)ならぴに皮膚血流量(BF)を測定し、電気刺激によって実験的に起こした刺痛pricking painに対する反応、ならびにその疼痛緩和における温罨法warmingと冷罨法coolingの効果を検討した。その結果、pricking painのような痛みには冷罨法は主観的にも客観的にも疼痛緩和効果があるのに対して、温罨法は逆に痛みを増強させることが明らかとなった。本年度は、同様の方法を用いて音楽や香りが疼痛緩和に効果があるか否かを検討した。 実験は健康な女性12名を対象とし、昨年度同様SCLとBFを測定し、上腕部に電気刺激を与えた。音楽は被験者の好きな音楽(音楽群、J-POP12)を、香りはエッセンシャルオイルを温め用いた。6種類のオイルを準備し、被験者の好きな香りを用いた(香り群、スウィートオレンジ4、レモン3、ラベンダー2、グレープフルーツ2、ローズマリー1)。SCLとBFの解析は反応時間と大きさを考慮するために、積分して面積を計算し評価した。また、主観的な評価にはVASを用いた。 SCLは刺激によって増加するが、cooling、音楽群、香り群いずれにおいてもその反応は減少する傾向がみられたが、controlと比較して有意ではなかった。刺激部位のwarmingによりSCL反応は増加頃向を示し、cooling、音楽群、香り群と比較して有意に大きな反応を示した。BF反応も同様に、warmingで増加する傾向がみられ、香り群、音楽群、coolingと比較すると有意に増強していた。また、VASによる主観的評価もwarmingは音楽を聴いているときと比較して有意に大きな値を示し、このことはwarmingにより痛みが増強することを示している。 以上の結果より、pricking painの疼痛緩和において、自分の好きな音楽を聴いたり、好きな香りをかぐことは、客観的にも主観的にも効果があると考えられる。
|