皮膚スキンコンダクタンス(SCL)および皮膚血流量(BF)を測定し、電気刺激によって実験的に起こした刺痛pricking painに対する自律神経反応、ならびに主観的痛み感覚尺度Visual Analogue Scale (VAS)を指標に、効果的な疼痛緩和方法を検討した。痛み刺激はpricking painと類似した痛みが起こる注射を想定して、前腕部と上腕部の2か所に行った。その結果、痛み刺激によってSCLの増加とBFの減少が認められた。これは交感神経系の活動亢進によると思われる。刺激部位を氷のうで冷やす冷罨法coolingでは客観的・主観的いずれの指標に対しても疼痛緩和効果があったのに対し、湯たんぽで温める温罨法Warmingはいずれも増強させることが明らかとなった。また、VASによる痛み感覚と自律神経反応、特にSCL反応の程度との間に相関関係が認められた。 近年、医療の現場で取り入れられつつある芳香療法(fragrance)と音楽療法(music)の疼痛緩和効果についても調べた。好みの音楽を聴取するあるいは好きな香りを吸入した場合、自律神経反応は減少したものの、Coolingと比較すると小さかった。また、主観的な痛み感覚も同様の結果であった。以上の結果より、pricking painのような痛みにはcoolingが客観的・主観的な評価いずれにおいても最も有効であり、逆に温めると痛み感覚も自律神経反応も増強することが明かとなった。音楽療法や芳香療法は多少緩和効果があるものの、pricking painといった一過性の痛みよりはある程度持続するあるいは慢性的な痛みに対して有効である可能性が示唆された。 痛みの緩和は看護実践において重要な課題である。痛みはその原因によって様々な痛みの種類があり、効果的に緩和するためには原因を十分に考慮し、緩和方法を選択することが重要であると考えられた。
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