研究概要 |
病棟看護婦が退院後の継続看護のために作成し,地域保健婦等に送る退院サマリーに着目して,患者からの事前同意の必要性および情報共有の範囲等をテーマとした事前調査から本研究はスタートした。平成12年度は,この成果を踏まえて,在宅ケアを受ける高齢者自身が抱くプライバシー概念の相対性に着目した検討・調査を行った。調査は,現時点ではまだ健康上の大きな問題がなく,介護保険の認定調査と同じ内容の調査を経験したことがある農村地区在住の高齢者を対象として行った。認定調査に含まれる項目の中から,主にADLに関する内容,疾病に関する内容,痴呆に関する内容,排泄上の問題に関する内容に絞って,これらの情報を保健婦,かかりつけの医師,ホームヘルパー,隣人,知人・友人など,自分以外のものに「知られる」ことへの抵抗感を面接調査した。29人の高齢者へのインタビューの結果,以下のことが明らかになった。1.健康に関する情報の内,ADLや疾病に関する情報では約25%が知られることに抵抗感があると答えたのに対して,痴呆や失禁に関する情報については約50%が抵抗感があると答えていた。2.知られる相手による抵抗感の違いについては,介護保険サービスにかかわる職種と隣人,友人・知人という一般人との間で違いが見られたが,介護保険サービスにかかわる職種の中では,保健婦,医師,ホームヘルパーおよび役場の事務担当者の間に特に差は見られなかった。3.知られることを受け入れる理由の一つに,「世話になる」という思いが大きく影響していた。このようにプライバシーに対する概念は,内容,相手,引き替える利益等によって相対的に変化するものであることが示された。平成13年度は,このプライバシーの概念をさらに深め,看護に役立つ知見を得るために調査,検討を進めていく。
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