1.文献検討 児童虐待に関して先進的な活動が行われている欧米等の児童虐待防止への援助のなかで、特に地域看護職により行われている家庭訪問に焦点をあてて文献検討を行った。ハイリスク母子に関する家庭訪問に関しては米国コロラド大学D.Oldsらによるエルミラ、メンフィス、デンバーでの大規模で長期的なRCT(randomized controlled trial)の結果から、低所得未婚の母親に対して家庭訪問が有効であり、追跡調査により児童虐待による子どもの傷害や事故が減少し、次の妊娠までの期間の延長、経済的自立が促されことが示された。また、J.MacLeod &G.NelsonらのPrograms for the promotion of family wellness and the prevention of child maltreatment:a meta-analytic reviewでは56のRCTのメタ分析が行われ、家庭訪問による介入により子どもへのマルトリートメントは予防でき、家族の健康を高めることができることを示している。 2.面接調査 1)体重増加不良(neglect)への保健婦の援助 体重増加不良の子どもと母親への援助を行っている保健婦2名に面接調査し、養育問題として乳幼児健診等で最も多くみられる体重増加不良のケースへの保健婦の援助をC M Wrightらをもとに作成した援助モデルを用いて分析した。保健婦はまず母親の育児能力を見きわめ、母親が育児を適切に行うことができるよう知識や情報の提供を行っていく。しかし母親や家族を取り巻く問題が複雑な場合は母親との信頼関係の構築をおこない、関係機関と連携しながら援助を行っていく。 2)児童虐待防止に向けた保健婦の援助 現在までに18名の保健婦に面接調査を実施し、そのうち14名のデータを分析した。分析より5つのカテゴリー「母親の支援者になる」、「子どもの発達、安全を確認する」、「家族とかかわる」、「近所の状況を把握する」、「関係機関と連携する」と18のサブカテゴリーが見いだされた。今後さらに分析とデータ収集を継続して行い、保健婦の虐待への援助内容を明確にしていく必要がある。 さらに導き出された成果を量的研究により検証していくことも今後の課題である。
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