1.面接調査の実施 児童虐待防止に向けた保健師の援助内容を把握することを目的に、22名の保健所保健師に面接調査を行った。調査内容は、今まで支援した虐待ケースの概要、支援の内容、支援に関する保健師の考え等である。対象者の平均年齢は46・2歳、保健師としての平均経験年数は21.6年であった。データの分析は、グラウンデッド・セオリー・アプローチの継続比較を用いて行った。 2.分析結果 保健師への面接データから帰納的に導き出されたカテゴリーを虐待問題のある母親への支援をおこなっている保健師や、質的研究者とともに、再度一つ一つの事例をあてはめ、演繹的にデータをみた。カテゴリー、サブカテゴリーの定義とそれらのネーミングについて検討を加え修正し、全体構造図を作成した。その結果、保健師の支援プロセスは、保健師が知覚したしんどさの程度に対応して2段階に分けられた。全体構造は、母親の【しんどさへの支援】を中核カテゴリーとし、15カテゴリー、52サブカテゴリーで構成される。【しんどさへの支援】とは、保健師が母親の身体的、心理的、社会的状況からしんどさという脆弱性があることに気づき、虐待の加害者である母親に焦点をあてて行う支援である。このしんどさは、母親が直接感じているかどうかではなく、保健師が母親の状況から知覚したものである。この支援は、前提条件として保健師が母親に出会った初期に知覚した母親の状況として《しんどさがあることに気づく》ことから始まり、《しんどさに気持ちを寄せる》という支援を行っていく。支援を継続するなかで保健師は、母親のもつしんどさの内容が徐々にわかり、《しんどさの本質を実感する》。それに伴い、支援は《しんどさを軽減する》へと進展する。《しんどさに気持ちを寄せる》から《しんどさを軽減する》支援への進展に、保健師に対する<母親の受け入れにくさ>が、それぞれの支援内容の拡がりに<母親の生活上の変化に着目する>が関連している。
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