B型機能訓練事業の参加者を対象に、日常生活に関する聞き取り調査を実施した。調査内容は家事や運動、人との交流を中心とした日常生活状況と、家庭環境、心身の状態などである。また約2週間日常生活記録機(ライフコーダ:スズケン製)を装着してもらい、客観的な1日の活動パターン、歩数、運動カロリー消費量(2METs以上の強度がある動作を含む)や2週間のうち最も少ない歩数を示した1日の歩数(以下「最小歩数」という)などを把握した。 協力の得られた対象者9名は全員女性で、平均年齢は73.6(最高79、最低70)歳であった。全員がADLは自立し、家事もほぼこなしていた。 活動に注目して日常生活状況を分類すると3つに分けられた。「日中臥床型」2名は最低限の家事以外は日中臥床して過ごすことが多く、生活上必要な買い物は週に数回行うが、知人との交流や老人クラブへの参加はなく、散歩など体を動かすことも行っていなかった。また生き甲斐がなく、気分的に時々落ち込むという共通点があった。運動カロリー消費量の平均値は68.5Kcalで、1日平均歩数は3650歩、「最小歩数」は689歩であった。家事が1日の生活の中心になっている「家事遂行型」5名は、精神的落ち込みもなく、買い物や近所付合いは毎日行い、知人との交流も週数回以上行っていた。運動カロリー消費量の平均値は107.2Kcalで、1日平均歩数は5744歩、「最小歩数」は2064歩であった。そして「積極的活動型」2名は、毎日1時間程度の散歩を日課にし、生き甲斐のある生活を送っていた。運動カロリー消費量の平均値は294.5Kcalで、1日平均歩数は12784歩、「最小歩数」は6446歩であった。 3つのグループについて活動量を比較すると、1日平均歩数は「日中臥床型」に比べ「家事遂行型」で約1.5倍、「積極的活動型」で約3.5倍であった。また「最小歩数」は日中臥床型で1000歩を割り、「積極的活動型」の約1/10にとどまっていた。さらに「最小歩数」が「日中臥床型」は1日平均歩数の約1/5で、「家事遂行型」の約1/3、「積極的活動型」の約1/2に比べ、極端に少なくなっていた。以上のように、高齢者の日常生活状況によって1日の活動量にかなりの差があることや、「日中臥床型」では体調不良などをきっかけにして活動量がさらに少なくなる危険性が明らかになった。
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