研究概要 |
高齢者の閉じこもり防止を目的の一つとした機能訓練事業の効果を検討するために、愛知県T市で平成13年9月から週1回開始された体操と話し合い中心のB型機能訓練事業参加者を対象に、開始時と10ヶ月後に調査を行った。内容は外出を中心とした日常生活状況に関する聞き取り調査と、起居能力、歩行能力、手腕作業能力、身辺作業能力の4項目からなる「生活体力」(財団法人明治生命厚生事業団体力医学研究所が開発)の測定である。また同意が得られた参加者には両方の機会に、約1週間生活習慣記録機(スズケン製)を装着してもらい、1日の歩数を含む客観的な活動量を調査した。B型機能訓練事業の効果判定は、各調査項目の前後の変化をもとにした。また同市在住の高齢者で、保健センターが主催する健康教室参加者の中からで同意の得られた者をコントロール群とした。対象群には開始時の調査結果を健康教育すると共に、毎回の教室に下肢筋力や平衡感覚等を強化する体操を組込んで実施した。コントロール群には開始時の調査結果と高齢期の運動の必要性および方法を伝える健康教育の機会を持った。 調査に協力の得られた対象者は、対象群14名(男性1名、女性13名)、コントロール群16名(全員女性)であった。調査開始時の平均年齢(±標準偏差)は、対象群73.0±7.0歳、コントロール群68.7±7.8歳で有意差はなかった。 外出を中心とした日常生活状況では全般的な外出頻度で対象群が頻度が増加する傾向がみられた。また買い物などの日常必需外出頻度は対象群で36.4%、コントロール群で6.3%が増加していたが差はみられなかった。散歩など運動目的の外出頻度は共に2割弱の増加がみられた。主観的健康観は、対象群で20.0%が改善し、80.0%が維持できていた。一方コントロール群では悪化した者が43.8%おり、対象群で有意な改善がみられた(P<0.05)。抑うつ得点(SDS-15より5項目抽出し、5点を満点とした)では対象群で改善した者が45.5%みられたが、悪化した者も27.3%おり、コントロール群と変化に差はなかった。 生活体力4項目について変化を検討すると、対象群は歩行能力、手腕作業能力でコントロール群に比べ体力が向上していた(それぞれp<0.1,P<0.05)。しかし身辺作業能力では変化の差がみられず、起居能力は対象群よりもコントロール群で有意に向上していた(P<0.05)。 生活習慣記録機による歩数を中心とした活動量は、平均歩数で対象群が1424歩、コントロール群が503歩増加していたが、変化量に差はなかった。しかし対象群では最低歩数がコントロール群の約2倍の1805歩に増加し、平均運動量でコントロール群に比べ増加する傾向がみられた。
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