研究概要 |
1.既存データの解析 平成12年度に実施した在宅難病療養者における介護保険制度導入前後のニーズ調査のデータを、以下の項目について分析した。 1)介護度別および疾病別の対象者の特徴・サービス構造 分析の結果,以下の内容が明らかにされた.(1)ALSは、介護度IIIにおいても医療ニーズが多く、呼吸管理や人工呼吸療法のケアが重要な鍵である。(2)介護度Vは、医療依存度が高く,介護保険では充分にニーズを満たすことができないため,サービス改善の必要性がある。 2)介護保険制度のアウトカム評価および今後の課題 介護度が低く、ADLが高く、嚥下障害・構音障害・膀胱留置カテーテルの装着が少ない療養者ほど、介護保険が有効に作用していることが明らかにされた。医療依存度が高い療養者が使えるサービスが少ない、緊急時の対応が不足しているなど、今後の改善点が指摘された. 3)介護保険制度の経済効果 介護度I〜IVでは、介護保険により行政サービスが介護保険サービスに移行され、さらに在宅療養環境が整えられた傾向にあるが、介護度Vは医療依存度が高いため、介護保険ではニーズの充足ができず、医療保険や行政のサービスが不足分を担っていることが明らかにされた。また、最もサービスを必要とする介護度Vの平均自己負担額は11,753.6(±20,284.2)円であり、これ以上の負担は経済力の低い療養者にとっては困難であることが指摘された。 2.文献レビュー 介護保健サービスでは医療依存度の高い患者に必要な訪問看護のニーズが充分に満たされておらず,行政サービスが不足分を担っていることが明らかにされた.また、訪問看護を提供する事業者側のマンパワー不足や利用に関する制度の限界が明らかにされ、各職種のケア量、費用などについて試算する必要があると指摘された。 3.事例調査 まず在宅療養者で最も重症である、ALS人工呼吸器装置療養者をモデルに、在宅療養にかかわる全ての職種のケア量,費用について試算することを目的に、現在調査内容,方法について計画を立案中である。
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