潰瘍性大腸炎分割手術の過程における空置的回腸人工肛門の時期に関して行われた研究は、検索の結果では水、電解質の喪失についてのものがわずかに見出だされたのみで、栄養に関する検討は見い出せなかった。空置的回腸人工肛門を造設した患者の協力を得て、人工肛門空置時期及び閉鎖後約3月後の両時期に、面接と調査票による食事摂取調査、及び安静時エネルギー消費量の計測によるエネルギー所要量算出を行った。あわせて、便性状と便中ブドウ糖排出量を簡易血糖測定装置を用いて調べた。 潰瘍性大腸炎を初めとして、本術式の適応となる患者は非常に少ないため、統計的分析が可能な症例数を蓄積している途上であるが、人工肛門空置時期では、体重増加分を除外してもエネルギー摂取量は所要量よりも多く、閉鎖後は摂取量と所要量の差が少なかった。エネルギー摂取量は空置時期のほうが閉鎖後よりも多くなっていた。また、便中ブドウ糖は便性が水様の場合のほうが泥状の場合よりも多く含まれ、ブドウ糖含有量が高い患者では、エネルギー摂取量が消費量に比して多かった。 患者の摂食調査内容の分析では、人工肛門空置後あるいは閉鎖後に脂肪の摂取比率が高かったが、これは患者との面接から、内科的治療に難渋した経験の反動である可能性が推測され、今後、これが一時的な現象かどうかを検討する予定である。
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