本年度は自立支援型看護ケアスキルの開発に必要な要素を明らかにする目的で、その比較として他方の看護ケア供給タイプ、すなわち生命維持型をコントロールとして、日本、カナダBC州、デンマークを対象に国際比較研究を行った。ケア供給の対象は人工呼吸器長期依存(Ventilator-Dependent)の頸髄損傷者(以下、VD頸損と略)とした。対象選択の理由はVD頸損が従来の継続研究から供給ケアタイプによってQOLに著しい差異を示すからである。分析データは生命維持型ケア供給のVD頸損12例、自立支援型VD頸損としてカナダBC州の4例、およびG.Nyholmらが実施したデンマークにおけるベンチレータユーザ110例の生活実態調査結果を自立支援型の事例として活用した。1次資料としたVD頸損16例のデータは訪問面接、電話およびインターネットで収集した。さらに自立支援型VD頸損4例に関しては、2000年8月カナダBC州にて直接収集したデータを含む。分析変数は、VD頸損の属性を独立変数、供給ケアのタイプとADL、介助の質と量を媒介変数、VD頸損の社会参加を従属変数とした。社会参加に関する変数は、気管切開実施者の自力発声、電動車椅子使用の有無、車椅子使用時間、外出頻度と外出距離、友人知人との交流頻度とした結果、自立支援型ケア供給のVD頸損およびベンチレータユーザはいずれも自力発声可、電動車椅子による自力移動可、外出も頻繁に可能であり、家族介護に依存せず、自立した社会参加が可能であった。他方、コントロール群の社会参加は、生命維持型VD頸損者12例中インターネットによる社会的交流4例、治療目的以外の外泊を要する長距離外出が2例、集会出席6例、散歩など日常的な外出は7例であった。すなわち生命維持型では12例とも1人以上の付添いを必要とする社会参加であり、4例が発声を可とするが、うち自力発声によるコミュニケーションを可とするのは皆無であった。他方、自立支援型は家族に依存せず自立した社会参加であり、その要因は気管切開者に対する自力発声、および四肢麻痺に対する自力移動を可能にするケアスキルであった。
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