女性にとって月経は、日常的な出来事であると同時に、健康指標として基本的かつ重要な現象である。近年、月経と関連の深いエストロゲンが女性の生涯の健康を守ることが明らかになった。しかし、約1ヵ月周期の月経を長期間記憶することは不可能である。従って女性は何らかの手段で自己の月経を管理していることが推測される。調査の結果、月経があった日を記録した女性は40歳70.2%、45歳81.6%、50歳53.2%、55歳48.8%であり、記録手段は手帳21.9%、カレンダー15.6%が最も多く、その他にBBT、ノート、日記等であった。記録期間が20年以上という者が15.6%で、最長期間は40年にも及んだ。他の生活記録の平均使用率は、家計簿24%、日記9.8%、1年手帳64%、自治体健康手帳20.3%であった。さらに、筆者は平成10年に月経および健康管理用として長期的な「10年女性健康手帳」を試作し、承諾を得た協力者40歳代女性400名に配布した。2年後の使用状況は40歳代前半女性52.5%、40歳代後半女性46%であった。また、本研究費助成により平成13年に改訂版「10年女性健康手帳」を作成し、承諾を得た45歳女性200名に配布した。1年後の使用状況は54.5%であった。本手帳は、「月経の予測と生活管理」や「更年期症状の把握」などに役立っていた。21世紀の日本の医療経済は厳しく、国民に自己責任による健康の自己管理が要求されている。更年期は月経が不規則となり、更年期症状も出現する。自身で簡単に自己管理できる月経を通して、女性の生涯の健康管理手段として長期的な健康手帳の使用を試みたが、改良の必要性はあるものの、その有用性が示唆された.
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