研究概要 |
1,研究対象及び方法:妊娠から出産・産褥5日目の継続的な期間の研究協力に合意を得た191名の妊産婦のうち,正常出産であった114名のデータを検討した. 2,方法:(1),超音波断層装置による方法:乳房の上方,下方と内・外側方の乳房エコーを行った.測定時期と測定回数は,妊娠23週まで1回,24週から出産までの1回とした。(2),同時に,乳腺発育に影響するエストラジオールとプロゲステロンの分泌量を測定,(3),母乳分泌量に関与する乳頭,乳輪の形状をデジタルカメラで捉え,授乳可能な乳頭をもつ産婦に,(4),生体電気インピーダンス測定装置による非侵襲性電極を用いて,乳房組織の構造的,機能的なデータを導電率で求めた。しかし,開発したインピーダンス測定装置は,平成13年4初旬に,作動状態に問題が生じ,114例は,超音波エコーで乳腺発育状態を判断し,乳房ケアを試みた。分析は画像処理ソフトを用いた。 3,結果:妊娠経過中の画像パタンの変化と母乳分泌量と乳房ケア:乳腺のエコーパタンは,乳腺組織と皮下脂肪比,乳腺実質と間質比,腺房状態の妊娠経過中の変化を個人内の変動値として検討し,乳汁分泌量と乳房ケアとの関係を検討した。脂肪比,乳腺実質と間質比は妊娠期を通して余り変化を認めず,腺房状の構造変化と乳腺組織の厚さから乳腺のエコーパタンを四型に分類した。腺房の変化が妊娠早期に著明なものを一型,さらに後期に変化を認めたものを二型,腺房の変化を認めたが乳腺組織が10mm以下であったものを三型,腺房が不鮮明で乳腺粗織が薄いものを四型とした。腺房の発育は初期に認めるものが約58%あり,エストロゲンはその発育に作用していると考えられた,また,乳腺発育に対する乳房ケアは,一型,二型は,児の吸啜と乳輪部から乳頭部への牽引が効果的であった。出産後の乳汁分泌の予測は,妊娠期の腺房構造を特定することにより可能であると判断した。
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