研究概要 |
当研究は記述的研究で,香川県,K病院に入院し,造血幹細胞移植を受けた患者12名より6名を中心に入院時,移植時,移植,移植後の患者の言語的及び行動上の反応をインタビューにより追跡し,次の6項目の研究質問に答えた。 1)自分の病名又は再発を告知されたときの患者の反応はどうであったか。2)造血肝細胞移植と言う治療そのものが危険を含む治療を選んだ理由及びその選択をする過程で影響したものは何か。3)治療又は病気のために自分が死ぬかもしれないと言う死についてどう考えたか。4)入院から退院までの治療過程にどう患者は反応し対処したか。5)患者の家族は,こうした患者の入院から退院までの過程にどう反応し対処したか。6)患者のコーピングの態度は日本文化の価値観などに影響されているか。 研究期間は2000年4月より2001年1月まで,2人の面接者がインタビューのテープをとり,それを言語分析,行動分析を行った。1回の面時間は約40分間,1人につき4〜6回の面接をそれぞれ行った。患者の家族には,その間1回のインタビューを行った。結果として次のことがわかった。1)患者は,病名告知に対してショック状態を経験した。2)移植を選んだのは,移植のほかに生命を維持することができないと考え,この考えを影響した主とした原因は医師の説明であった。3)自分は死ぬとは思っていない。4)家族は患者と同じような反応を示した。5)移植後の精神身体反応は不安と希望の両極端があり,未知のもの,死に対する恐怖が強かった。移植中の無菌室では身体的苦痛を乗り越えるだけで,一生懸命で不安に満ちていた。無菌室退室より退院の期間では,日常生活に集中し,入院中の苦痛は思い出さないようにしていた。6)日本文化の価値観と言う影響はなく,患者は医療科学が生命を助けることを信じていた。当結果は2001年2月の第2回アドバンス国際質的研究方法学会,カナダで報告。
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