研究概要 |
【研究目的】前年度の看護職に対する研究結果を踏まえ,研究目的は教育の受け手である患者側から患者教育の基礎資料を得るため,糖尿病患者が自己管理を続ける上での困難な体験やその対処法,適応状態にいたるまでの経過を明らかにすることである。【研究方法】多様な療養法の個別の経過を探索するために,グランデッドセオリーアプローチによる個別面接調査を行った。対象は外来を受診している糖尿病患者で,面接調査に同意の得られた19名である。【結果】自己管理を続ける上での困難な体験は,「食事量の制限があること」,「役割遂行や社会生活と治療の両立」,「外出時のインスリン注射」,「低血糖の体験」などであった。これらの困難な体験に対する対処法は,現在の適応状態別にみると適応状態のよい人は「食事量の制限があること」について,食事療法に対する慣れや負担感が少なく,食事療法を健康食ととらえ,自分なりにうまく食事摂取方法を工夫し,実行していた。不適応状態の人は食事に対する満足感がない,厳しい食事管理への負担感や怒りなどを表現しており,食事療法を生活に統合させることでの失敗体験を積み重ねていた。「役割遂行や社会生活と治療の両立」については適応状態のよい人は,肯定的な人間関係を構築し,社会的支援を獲得し,社会的役割と治療の両立を行っていた。不適応状態の人は,糖尿病に対する否定的な気持ちが強く,周囲に病気を悟られないよう行動し,ストレスを感じていた。「外出時のインスリン注射」についてはトイレや外出先で注射するという同様の対処法をとっていたが,認識の違いにより適応状態に違いがみられた。「低血糖の体験」では,普段から準備している,低血糖予防のため過食となる,教育を受けるなどの対処法をとっており,対処法がわかっている,周囲から援助を受けるという適応状態がよい人と,症状発現に対する漠然とした不安を示す不適応の人が認められた。
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