本研究は、糖尿病患者の療養生活に関わる方法や教育活動の実態を明らかにし、特に患者の日常生活の援助を行っている看護職の教育活動や患者側からの評価を通して、自己管理を継続できるような教育方法についての基礎的資料を得ることを目的としている。 平成13年度の研究で得られたデータを基に、平成14年度の研究は、糖尿病患者が自己管理を行う上での困難な体験とそれに伴う気持ちの変化に焦点をあて、糖尿病の自己管理と社会生活の調整に伴う困難な気持ちから肯定的な気持ちへと変化した対処を明らかにすることを目的としている。平成13年度の結果の「役割遂行や社会生活と治療の両立」に関する気持ちの変化に焦点をあて更なる分析を質的に行った。分析の結果、困難な気持ちには、『つき合いにおける食事療法の負担感』があり、「食事療法をつき合いの制限と感じる」、「自分が糖尿病であることを知られたくない」思いがあった。困難な気持ちから現在の肯定的な気持ちへと変化した対処には、「糖尿病の告白」、「自分なりの食事自己管理基準での実行」、「仕事上の責任回避」があり、糖尿病患者は対処法を単独で用いたり複数の対処法を組み合わせて用いることで、ストレスフルな状況を乗り越え、前向きに糖尿病の自己管理を捉え社会生活の調整を行っていた。 3年間の研究結果に基づき、糖尿病患者が職場や家庭、地域における役割を果たしながらより望ましい療養生活を継続していけるように、個々の患者が抱えている問題に対して医師・看護師・栄養士で構成された医療チームがその専門性を発揮し協力して患者の療養生活を支援する個別患者教育を実践している。患者個々のインタビューで得られた情報から、(1)患者の情報を共有するためのデータベースの作成、(2)問題の抽出、(3)患者の到達目標の設定と介入方法の検討、(4)患者教育、(5)評価を行っており、今後の研究として継続していく予定である。
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