研究概要 |
目的:妊娠期の母親の精神的なストレスが母児の自律神経機能に及ぼす影響を明らかにするとともに,精神的なストレスの対処方法であるリラクセーション技法による看護介入の効果を母児の両者を対象に検証することである. 方法:T大学病院の妊婦健診に受診中で研究協力の得られた妊娠31〜40週の妊婦53名,ならびに対照群は22〜24歳の非妊婦13名を対象に,Stroop Color Conflict Testによる短期的なmental Stressと,イメージ法によるrelaxation技法を用いて,情動変化に伴う自律神経機能活動の変化を,母児の心拍変動解析ならびに胎動を用いて検討した. 結果:1.妊娠末期母体の心拍変動解析による自律神経活動評価 1)非妊婦との比較において,妊娠末期妊婦の交感神経活動はより亢進し,副交感神経活動はより低下を示した. 2)短期的なmental stressでは母体の交感神経活動は亢進し,副交感神経活動は低下を示した.一方mental stress後のrelaxationでは,交感神経活動は低下し,副交感神経活動は亢進を示した. 2.母体の情動変化が胎児の状態に与える影響 1)情動変化に伴う胎児stateの変化は認められなかった. 2)胎児心拍数は胎児の活動周期がactive phaseの状況では,両情動状態の変化で違いがみられた.mental stressでは変化がなかったが,relaxationでは僅かな変化であるが明らかに胎児心拍数は低下し,胎児心拍数の変動幅は大きくなることが示された.従って,母体の副交感神経活動が亢進すると,胎児の副交感神経活動も活発になることが推測された. 3)胎動は両情動状態とも活発になる傾向が示された.mental stressでは胎児の活動周期に関係なく,刺激直後には胎動数は増加したが,持続はしなかった.一方relaxationでは胎児の活動周期がactive phaseの状況では胎動は活発化の傾向が示されたが,resting phaseの状況では今回は該当ケースが少なく,検討できなかった. 以上から,妊婦の短期的な精神的ストレスは,母体の自律神経活動に影響を及ぼし,それが胎児のstateを変化させる程ではないが,瞬時的に胎児心拍数と胎動に影響を及ぼすことが示唆された.また,妊婦が精神的なストレスに遭遇した際にリラクセーションを心かげることは,母体のみならず胎児にも効果的な影響を及ぼすであろうことが示唆された.
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