研究概要 |
目的:妊振期からの母親の心理的な要因が妊娠・出産や出産後の母子関係に及ぼす影響について、妊棚初期からのlongitudinal studyにより検討する. 方法:1.平成13年7月〜8月に、K大学病院の妊婦検診で研究協力の得られた1st trimesterの初経妊婦92名ならびにT病院母親学級受講者の初産婦約100名を対象に、以下の縦断的珊査を実施した. (1)1st,2nd,3rd trimester,産褥3〜4日の各々に、同一対象者に不安調査STAI Form-Y(高橋ら)ならびにタイプA行動パターン(前田式、Bortner)による質問紙調査を実施した. (2)産褥3〜4日に、初経産婦とその児13組を対象に、授乳場面をビデオ撮影し、臨床経験3年目以上の助産婦5〜6名で、AMIS(Assessment of Mother-Infant Sensitivity)による評価を行った。 (3)同様に、妊婦期に特性不安が高い群と低い群の褥婦数名の授乳場面をビデオ撮影し、AMISで評価した.あわせて母親へはMABS(Mother and Baby Scale)の質問紙調査も行った. (4)産科合併症(妊婦期。分娩期。産褥期。児情報)について診療録と助産録より情報を収集した。 結果:現在までのところ、縦断的データではまだ約3分の1の対象が出産を控えているため、(最終は4月末分挽予定)、途中経過の結果を報告する(最終結果は研究成果報告書で報告予定). (1)妊娠期のSTAIならびにタィプA行動パターンの変化を初経別ならびに妊娠時期の2×3要因のrepeated ANOVAで検討した結果、タイプA行動パターン(前田式とBortnerともに)ならびにSTAIの特性不安は、初経別・時期別ともに有意な違いは認められなかった.一方STAIの状態不安は、経産婦は1st trimesterが有意に高かったが、経産婦では時期別変化はなかった. (2)AMISの信頼性について、産褥3〜4日の母児13例を対象に検討した結果、ケンドールによる評定者間一致率は母親項目では、有意に中から高い一致率が認められた.しかし、児項目、相互作用項目では、有意な一致率を示さないケースもあり、検討の余地が残された. (3)妊婦期に特性不安が高い2ケースと低い2ケースの初産婦を対象に、産褥3〜4日の授乳場面におけるAMISとMABS得点を比較すると、特性不安が高い2ケースは、明かにAMISの母親項目ならびにMABSの母親の自信不足と児の興奮性の得点が低かった. (4)妊娠中のSTAIならびにタイプA得点と産科合併症の関連については現在検討中である. 以上から、途中経過報告であるが、これまでの結果からは妊娠時の心理的な要因と、産褥早期の母子関係との関連とは、否定できない可能性が高いことが示唆されている.
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