研究概要 |
本研究は精神障害者の地域生活促進と再発防止のための急性期ケアプロトコールの開発を目的とした研究である。平成12年度は精神障害者の地域生活の促進・維持に向けた急性期治療病棟における看護ケアの実態を明らかにし、さらに退院後3ヶ月未満で再入院した再入院群と退院後3ヶ月以上地域生活を送っている地域生活維持群にわけて看護ケアを抽出することを目的として研究を行った。私立K精神病院の急性期治療病棟に、平成12年8月1日から10月31日に入院した精神障害者47名をケアした受け持ち看護師14名を対象とし面接調査を行い、患者の入院時、退院時に入院中の意図的看護ケア(セルフケアへの援助、サポート体制作り)について述べてもらった。また患者退院後は外来にて、退院後3ヶ月間、自宅でのセルフケアについて調査に同意の得られた精神障害者に面接調査を行った。対象となった14名の看護師は平均年齢38.1歳、男性7名、女性7名で、看護師が述べた精神障害者は47名だった。入院中の看護ケアとしては(1)薬効と症状のモニタリング、(2)今後の服薬継続のために薬効と副作用のバランスを吟味し医師に相談、(3)本人の安心できる場と人を作る、(4)本人自身の症状コントロールの方法を知る、(5)外出泊を繰り返しながら症状とセルフケアの安定度を確認する、(6)周囲の人間への理解度と協力度を知り必要に応じて調整する、(7)経済状況の確認と今後の生活における患者の希望とセルフケア・症状のバランスを患者とともにはかる、(8)日常生活での相談できる人と場をつくる、(9)患者の希望を中心とした生活の再構成を行うというカテゴリーが抽出された。またサポート体制作りでは家族へのケアが抽出され、地域での社会資源との連携は抽出されなかった。再入院群の看護ケアでは病状とセルフケアに関するケアのカテゴリーが抽出され、家族のケアに関するカテゴリーは抽出されなかった。 平成13,14年度はこれらの結果をもとに急性期ケアプロトコールを作成し、2つの私立精神病院においてプロトコール実施前後の看護ケアについて受け持ち看護師に面接調査を行い、質的な内容の分析を行い、ケアプロトコール実施前後のケアの評価を行った。実施前には病状、セルフケアの改善が重要視されていたが、実施後には地域との連携、早い時期からの他職種との連携、家族との関係性を作り、患者をケアできるサポート体制をつくる、患者の安定した病状及びセルフケアの把握が早いうちに可能になることが看護ケアとして抽出された。今後、精神障害者の地域生活促進のための急性期ケアプロトコール妥当性を検討するため、患者、家族への効果を検討していく必要があることが討議された。
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