糖尿病性腎症(DM群と略す)と慢性糸球体腎炎(非DM群と略す)の透析患者28名の透析除水による下肢循環への影響を検討するために透析時4時間の下肢皮膚血流を測定した。各群の透析経過時間ごとの両下肢皮膚血流変化率を従属変数にして、反復測定による一元配置の分散分析を行った結果、DM群の左下肢皮膚血流変化率(P<0.001)、非DM群右下肢皮膚血流変化率(P<0.001)、左下肢皮膚血流変化率(P<0.0001)であり、両群ともに透析進行に伴う下肢循環への影響が示唆された。また、両群を独立変数にし、透析時間経過ごとの両下肢皮膚血流変化率を従属変数にして二元配置の分散分析を行った結果、左下肢皮膚血流変化率では群の主効果(P<0.01)、透析経時間の主効果(P<0.001)、交互作用(P<0.01)がみられ、DM群は非DM群よりも左下肢皮膚血流が低下することが示唆された。 以上の結果を踏まえ、透析の除水による下肢末梢血管収縮は透析終了時に最大になるため、透析終了時に適切な温度と時間を検討した足浴は、下肢の皮膚血流増大や皮膚温度上昇を促し、透析による下肢末梢循環状態を早期に改善すると考える。そこで、14年度はDM群を対象に下肢末梢血管を拡張する効果的な足浴方法を検討した。 現在、糖尿病性の皮膚潰瘍の治療として注目されている二酸化炭素ガスは経皮的に吸収されると末梢血管拡張作用、皮膚血流量増加作用、温感持続作用があると言われ、人工的に高濃度炭酸泉を産生する装置が製造され、数年前より糖尿病性皮膚潰瘍にも治療として高濃度人工炭酸泉(遊離炭酸)で足浴させることで効果がみられている。そこで、温浴中に炭酸ガスを発生・溶解する入浴剤を足浴に使用し、高濃度の遊離炭酸を得る足浴方法を試行した。そして、DM群11名に透析前、透析終了直後に炭酸ガスの入浴剤を用いて足浴を実施しながら透析状況ならびに皮膚血流値、皮膚温度、脈拍、血圧等を測定し、現在その効果を定量的に分析・検討している。
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