研究概要 |
12年と13年度に,それぞれ成年男性と閉経後の中高年女性を対象に,50分間の快適自己ペース運動(comfortable self-paced exercise: CSPE)が,体温を上昇させ,情動の改善,血中NK細胞活性,カテコールアミン濃度を上昇させ,夜間睡眠を改善することを明らかにしてきた。本年度は性周期の影響を強く受ける青年期の女性について,月経周期を黄体期に揃えて,50分間のCSPEの効果を体温,情動,血中NK細胞活性,カテコールアミンと女性ホルモン濃度,心拍数,夜間睡眠から検討した。本研究の趣旨を説明し,文書で承諾を得られた20歳代の健常な女性12名を対象とし,実験に先立ち,1ヶ月以上基礎体温を測定させ,2回目の黄体期を実験日とした。実験は18:30から20:20に行い,練習日の後,50分間(19:00-19:50)CSPEを行う日,同時刻に写真集を見て過ごす対照日で構成した。CSPE日の測定値を,同じ被験者の対照日の値と比較することで,CSPEの効果を明らかにした。50分間のCSPE時の心拍予備率の平均値は59.6%であり,10分毎の主観的運動強度(RPE)平均値は12.0で「やや楽である」から「ややきつい」の間にあったので,CSPE負荷強度は中等度と推測された。対照日に比べ,CSEP時に質問紙MCL-S.1で評価した快感情得点が上昇し,POMSで評価した活気得点の上昇と抑うつ得点の低下が認められ,positiveな感情の冗進とnegativeな感情の低下を示した。鼓膜温の上昇がCSPE時に観察された。血中NK活性,カテコールアミンとエストラジオール濃度は,CSPE直後に上昇した。CSPE日の就寝前の感情と夜間睡眠の改善傾向が観察された。従来,研究の少ない性周期が黄体期の青年女性について,情動の最適化をもたらす50分間の無理のないCSPE効果の解明は,応用的価値も高い。
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