本研究は、子どもの家庭・学校・地域での自然遊びやスポーツにおける諸問題を「身体」(生きる力・ゆとり・こころ)に関する心理・社会学的パースペクティブから考察すること、特に、野外におけるさまざまな遊びやスポーツの実験を通じて、子どもの「こころ・からだ」の変化の容態を記述し、「子どもの『笑顔』の身体論的意義に関する論理的考察」をもとにそれらを分析することを目的としている。 今年度は、「子どもの笑顔の身体論的意義に関する論理的考察」と、「子どもの自然遊び・スポーツに関するさまざまな取材(実態調査)や実験」を行った。 「子どもの笑顔の身体論的意義に関する論理的考察」については、主として市川浩の身体論から、自然遊び・スポーツにおける体験が子どもの「からだ・こころ」(身)の「錯綜体」において生きる力の「引き出し」として機能し得ること、また、主として木村洋二の笑い(笑顔)論から、そうした子どもの体験において表出される笑顔が生きる力の証しであることの論理的可能性があることを明らかにした。今後は、これまでの考察をさらに深め、平成13年度に予定しているさまざまな実験の論理的分析と実証的説明に有効な枠組を完成させたい。 「子どもの自然遊び・スポーツに関する取材(実態調査)や実験」については、那須茶臼岳・つつじ平ハイキング、那珂川水まつり、安達太良山ハイキング、那須甲子や森林公園での自然遊び等における子どもの笑顔の取材(写真やビデオの撮影やインタビュー、および記録・レポートなど)を通じて、子どものこころ・からだのアイデンティカルな表出を確認できた。また、海の子・山の子遊び、自然あそび塾、乗鞍での野外ゲーム、常盤小学校での自然遊び(校庭)、水戸生涯学習センターでのイニシアティブ・ゲーム、(およびスポーツ少年団の指導者へのアンケート調査)等における実験(遊びの実践と共援、撮影、録音、記録、インタビュー、アンケート調査、および評価など)を通じて、こうしたさまざまな子どもの「自然体験遊び」において看取できる笑顔が、子どもが生来持っている生きる力のおおらかな自己表現であり、とりわけ「自然」や「仲間」の存在、および、それらとの「共感」が、「笑顔」表出の大きな要因であることが示唆できた。今後は、よりきめ細かな「しかけ」を準備し、さらに大規模な実験を行ないたい。
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