乳酸輸送担体MCTについては、現時点ではその存在がようやく明らかになった段階であり、運動やトレーニングによってその発現がどのように変化し、それにより運動時及び運動後における乳酸の代謝がどう影響を受けるのかなどは明らかではないといえる。ここでMCTはタンパクであるから、その濃度を求めるには抗体を用いたウェスタンブロット法が用いられる。そこで本年度はMCT1及びMCT4の抗体を作成し、これらを用いてウェスタンブロット法により、タンパクレベルでラットのヒラメ筋、足底筋、長指伸筋、心臓、肝臓、腎臓などの組織による両輸送担体の発現量を比較検討した。その結果MCT1は心筋やヒラメ筋など酸化能力の高い組織に多いこと、MCT4はfastタイプの割合が多いと考えられる筋に多いことを確認した。このことは筋線維組成とMCTの発現とに関係があることを示している。そこでラットの尾懸垂によって特にslowタイプ線維にた筋で萎縮あると考えられる筋でのMCTの濃度変化を求めた。その結果尾懸垂により萎縮した足底筋において、MCT1の発現低下が観察された。ただしMCT4も発現が低下していた。また尾懸垂時に筋をストレッチされた状態にすると筋萎縮がかなり防ぐことができることが知られている。この状態では、MCT1及びMCT4の発現低下も抑えられていた。したがってMCTの発現には、筋線維タイプ、筋活動、また筋の構造上の要因も影響することが示唆された。
|