乳酸輸送担体MCTについては、その存在が明らかになった段階であり、違動やトレーニングによってその発現がどのように変化し、それにより運動時及び運動後における乳酸の代謝がどう影響を受けるのかなどは明らかではない。MCTには7種類あることが1998年に報告されたが、そのうち運動による乳酸の代謝に強く関連すると考えられるのは、遅筋線維に多いとされるMCT1、速筋線維に多いとされるMCT4である。これらについて持久的運動や高い強度の運動、また持久的トレーニングによって乳酸輸送担体発現が受ける影響を明らかにするとともに、MCTの発現の変化が運動時及び運動後における乳酸の代謝に与える影響を明らかにしていくことが本研究の目的である。13年度はまずトレーニングによってMCT量がどのように変化するのかについて、ラットに加えてマウスについても行った。その結果、マウスの自由運動、持久的トレーニング、スプリントトレーニングによって、MCT特にMCT1のタンパク量が増加することが明らかとなった。ただしトレーニング効果が得られるには1週間では短く、3-6週間は必要と考えられた。また自由運動に見られるトレーニング効果は、強度の低い持久的トレーニングに近いことが示唆された。一方MCT4は一般的にはあまりタンパク量に変化が起きにくいことがマウスでも確認されたが、スプリントトレーニングを行えば、ある程度はMCT4のタンパク量も増加することがわかった。こうしたトレーニングによって、マウスの高強度運動において乳酸の産生は変化なく除去が高まっていることが示唆され、その除去の高進にMCTタンパクの増加も貢献していることが示唆された。さらに糖尿病は糖代謝が低下した状態と考えられ、この時の乳酸代謝も低下する。この時のMCT発現についてもラットを用いて検討した。STZ投与糖尿病ラットでは乳酸の代謝が低下し、MCTタンパク量も低下していることがわかった。
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