乳酸の細胞膜通過に当たっては、乳酸輸送担体MCTが働いている。MCTには7種類あることが1998年に報告されたが、そのうち運動による乳酸の代謝に強く関連すると考えられるのは、遅筋線維に多いとされるMCT1、速筋線維に多いとされるMCT4である。これらについて運動やトレーニングによってタンパク発現が受ける影響を明らかにするとともに、MCT発現の変化が運動時及び運動後における乳酸の代謝に与える影響を明らかにしていくことが本研究の目的である。14年度はトレーニングによってMCT量がどのように変化する時間変化について検討した。その結果、マウスの自由運動、持久的トレーニング、スプリントトレーニングによって、MCT特にMCT1のタンパク量が増加するのであるが、1週間では短く、3週間以降は大きなさらなる効果が見られにくくなることから、マウスでは3週間程度のトレーニング期間が必要と考えられた。ただし1週間の持久的トレーニングではMCTには必ずしも変化がなくても、高強度運動中の代謝については血中乳酸濃度が低下するといった効果が見られた。このことは持久的トレーニングでは脂質代謝の高進も大きく影響していることを示すと考えられる。一方これまでの細胞全体のMCTを分析しているが、さらに細胞膜を単離し、その中のMCTを求めることで、細胞膜におけるMCTのタンパク発現量を検討した。その結果でもこれまでの細胞全体を用いた結果と同様に、持久的トレーニングでMCT1が増えることが示された。
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