身体運動は、自分の意志で運動を始めようとする「自律制御」と、いったん運動が始まったら、他の器官などに同調される「引き込み現象」から構築されている。これらの仕組みを明らかにするためには、その基礎づくりとして身体運動に関わる基礎原理を様々な方向から検討しておかなければならない。そのために、以下のような研究を行った。 1:従来のシミュレーション研究を総括し、シミュレーション分野の進み具合を文献的に確認するとともに、その問題点を明らかにした。 2:垂直跳および立幅跳を対象にした実験によって、下肢の二関節筋の役割、腕振りの効果などを明らかにした。また、超音波法を用いた実験によって、運動中の筋紡錘の働きを、伸張反射を通して明らかにした。 3:ダイナミックな身体運動で大きな役割を果たす「筋腱複合体MTC」について、超音波法および力学モデルを用いた方法によって、各要素の力学特性を定量した。 4:収縮要素および直列・並列弾性要素からなるHillタイプのMTCモデルを作成した。このモデル1個の動的特性を検証し、身体に配列されている筋の役割を考察した。次に、身体骨格モデルに、MTCモデルを複数個とりつけ、立位の足関節屈伸運動、垂直跳、歩行のシミュレーションを行い、成功した。 この人体骨格MTCモデルを用い、神経入力を様々に変化させて動作を構築するという手順を通して、脳の高次機能に接近するという土台ができあがった。
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