テニス、野球、ゴルフ等の打具を用いた運動では、体幹のその長軸周りの回転が、打具に大きな速度を与え、ボール速度を大きくするために重要である。本研究は、これらの運動の打動作について、高速度映画撮影と床反力の計測を用いて、体幹のその長軸周りの回転を生み出す下肢の働きの仕組みを明らかにすることを目的とした。 テニスについては、大学関東1部リーグのチームに属する選手14名のバックハンド・グランドストロークの、そして野球については、東都大学1部リーグチームのレギュラー選手8名のティーバッティングの測定を行った。また、ゴルフについては、レッスンプロ3名と低ハンディのアマチュア2名のドライバーショットの測定を行った。 テニスの両手打ち及び片手打ちバックハンド・ストローク(軽度のトップスピン)では、主に後脚の股関節伸展筋群と前脚の股関節内転筋群が、骨盤のその垂直軸周りの回転に貢献していた。両手打ち及び片手打ちのストロークでは、それぞれ後脚の股関節伸展筋群と前脚の股関節内転筋群の貢献が上回っている傾向にあった。ゴルフのドライバーショットでの股関節周りの筋群の貢献のパターンは、基本的にはテニスの場合のパターンに似ていた。野球のバッティングでの股関節周りの筋群の貢献のパターンについては、テニスの場合のパターンに加えて、前脚の股関節屈曲筋群の貢献が観察された。 この前脚の股関節屈筋群の貢献が、テニスのバックハンド・ストロークとゴルフのドライバーショットでは観察されなかった理由は、テニスではトップスピンボールにして返球するためにラケットを上方へ振る必要があり、また、ゴルフでは円運動をするクラブの向心力を生み出すために、インパクト直前にはクラブをその回転中心の方向へ強く引く必要があり、それぞれ前脚の股関節を伸展せざるを得なかったためと考えられる。
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