本研究における目的は、剣道競技者の「胴打ち」の打撃力を測定し、その実態的・基礎的資料を元にして、年齢、性差、そして技能差などの対象者の特性を考慮に入れた緩衝性能の高い、安全性を考慮した規格値を作成するための基礎的資料を得ることである。 1.平成12年度は、「胴」打撃力測定装置を使用して、各年齢層(小学生、中学生、高校生、大学生、成人)の剣道競技者の胴打撃の衝撃力を測定し、以下の結果が得られた。 1)中学生の打撃力が非常に大きく、いたずらに強く打ちすぎる傾向にあり、障害防止のために、技術指導上十分な配慮が必要である。男子小学生の打撃力は最大値が大きい者も多いことから、胴の緩衝性能について規格値を設定する場合には、安全性の観点から成人同様の規格値を勘案すべきである。 2)胴打撃力の各分力は、おおむね前方向に約22〜29%、下方向に約12〜19%、そして右方向に約54〜60%の割合で出現する。 3)打撃力へ影響する要因としては胴打撃の動作様式などの技術的相違によるところが最も大きいものと考えられる。 4)剣道競技者の胴打撃力測定結果から、胴打撃力発生装置の打撃力値(右水平分力)は、100kgfから180kgfの間でセットすることが望ましい。 2.平成13年度は、打撃力発生装置製作および打撃力測定装置の改良を行い、材料や構造など相違による緩衝性能の相違を明らかにし、新しく安全性を考慮した規格値を作成するための基礎的資料を収集し、以下の、結果が得られた。 1)既存の胴の種類は様々であるが、胴打撃よって身体に作用する衝撃力を約1/2まで緩衝している。 2)胴幅が身体の腹部の幅よりも大きいことが、緩衝性能をより高める。 3)胴の材料の相違や構造およびその重量も緩衝性能に影響する。
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