床振動を負荷された経験のない健常大学生を対象に、床振動時の姿勢制御の自動化に伴う眼球と手指の運動制御の変化を検討した。眼球と手指の運動は、反応型(それぞれ、サッケード群:9名、反応僻:10名)と追従型(それぞれ、スムース群:10名、追従群:10名)とした。 床振動は振動幅2.5cm、周波数0.5Hzでのsin波状の前後移動とした。被験者にはゴーグル型ディスプレイを装着し、標的を提示した。眼球運動はENG法で、手指運動は直線型ポテンシオメータを左右方向に操作することによる電圧変化で把握した。追従群では、その電圧変化で左右に移動する追従光源をディスプレイに提示した。標的は20度の視角で水平に移動させ、反応型では2-4秒の任意の間隔でstep状に、追従型では周波数0.3Hzでsin波状に行った。眼球運動ないし手指運動の練習の後、振動台に装着した床反力計上で立位での眼球運動ないし手指運動のみの測定を行い(control)、その後床振動を11回負荷した(各1分)。第1と第11試行では眼球ないし手指の運動を平行した。足圧中心動揺の平均速度、反応時間(サッケード群、反応群)、標的と眼球位置(スムース群)ないし追従光源粒置(追従群)との相互相関係数を算出した。足圧中心動揺の平均速度は、全ての群において初期の試行で大きく減少し、第6-10試行では低い値を維持した。サッケード群以外では、第11試行での平均速度が第10試行に比べて有意に増加した。また、追従群でのその増加は反応群に比べて有意に大きかった。眼球運動の成績は、スムース群においてのみ第1試行がcontro1と第11試行に比べて有意に低かった。手指運動では同様の結果が反応群と追従群に認められた。これらは、姿勢制御の自動化に伴い眼球および手指の運動の並行制御能が向上するが、随意性の強い運動では姿勢制御との干渉が大きいことを示すものと考えられた。
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