今年度は、昨年度開発した反応時間の測定システムを用いて、日本人学生10名(平均年齢、21.9歳;男子6名、女子4名)と外国人学生(留学生)10名(平均年齢、27.8歳;男子6名、女子4名)を対象にした周辺視野反応時間の測定を行った。なお、留学生の出身国は、アジア系が7名、ヨーロッパ系が2名、アフリカ系が1名であった。視覚刺激は注視点(中心視野)と、注視点から右水平方向と左水平方向にそれぞれ周辺視野10度、20度、および30度の6つの周辺位置に呈示し(計7点)、被験者は視覚刺激が呈示されたらできるだけ早く右示指でキーを押し、中心視野と周辺視野における単純反応時間を測定した。この結果、日本人と留学生の周辺視野反応時間と中心視野反応時間の平均値はほぼ同一の値を示し、グループ間に差は認められなかった。また、周辺視野反応時間において性差、左右視野の差もみられなかった。 予定していた数の留学生の協力が得られず、運動負荷中の周辺視野反応時間の測定が実行できなかったため、周辺視野反応を行なう場合に眼球運動(サッケード)を同時に行なう場合の干渉について研究を加えた。一般学生と大学バレーボール選手を対象にして、周辺視野キー押し反応時間(10、20、30度)とサッケード反応時間をあわせて行なった場合の、二つの反応時間にみられる干渉効果について比較した。キー押し運動のみ、サッケードのみをそれぞれ単独で行なった場合は両グループ間で反応時間の差はみられなかったが、キー押しとサッケードをあわせて行なった場合では、一般学生のキー押し反応時間がバレー選手と比べて有意に遅くなった。このことは、一般学生はキー押し反応がサッケード反応によって干渉を受けるが、バレーボール選手は同一の干渉を受けないことを意味しており、日常のバレーボールトレーニングによる影響による可能性を示唆した。
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