日本人と留学生の周辺視野反応時間と中心視野反応時間の平均値はほぼ同一の値を示し、グループ間には差が認められず、人種に応じた周辺視野反応時間に差がないことが明らかとなった。大学サッカー選手は一般大学生と比較して周辺視野および中心視野での反応時間に優れていることが明らかとなり、サッカー選手は、日々のトレーニングによりその能力を向上させたことを示唆している。そこで、周辺視野と周辺視野での反応時間をトレーニングする2群を設けてトレーニング実験を実施し、二つのトレーニング効果の交互作用について検討した。周辺視野反応時間をトレーニングした群では、トレーニングをした周辺視野だけでなく中心視野でも反応時間の短縮がみられた。中心視野反応時間をトレーニングした群でも中心視野だけでなく周辺視野でも反応時間の短縮がみられた。これらの結果は、いずれの視野におけるトレーニングも、キー押し運動に関連する中枢処理時間が短縮したことを意味しており、キー押しという単純反応時間であれば、中心あるいは周辺いずれかの視野においてトレーニングをすれば、効果が転移することが明らかとなった。さらに、広範囲にわたる視野の中からランダムに視覚刺激を呈示する条件下において、ヒトは注意を等しく配分するか、あるいは何らかの戦略をとるかについて検討し、被験者は広い視野の中間の位置に対して能動的に注意を向けることを明らかにした。最終年度では、周辺視野反応時間は、低強度および中強度の運動中は変化せず、VT(換気性作業閾値)を超える高強度の運動負荷時に増大することを明らかにした。 これらの研究成果は、日本体力医学会など数回の国内学会で発表し、別紙に掲げた学術雑誌に公表した。
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