研究概要 |
バレーボール男子チームが使用している攻撃戦術は,後衛の選手も含めた4人の選手による速攻のコンビネーション攻撃であることは既に究明した。今回,女子チームの攻撃戦術に関して新しい知見を得たので報告する。 女子ワールドグランプリにおけるキューバ,ロシア,ブラジル,中国の試合を16mm高速度カメラとVTRを併用して撮影し,サーブレシーブからの攻撃を映像解析することにより,世界トップレベルの女子チームが使用しているコンビネーション攻撃の特徴を究明した。 サーブレシーブからの攻撃におけるファーストサイドアウト率は,男子と比べて低く,女子全体では42%であった。女子チームのサーブレシーブからの攻撃では,3人攻撃の使用頻度が高かった。しかしコンビ攻撃パターンはチームにより違いが見られた。サーブレシーブは,専門のサーブレシーバーを置かず,全員が交代しながら3人制あるいは4人制の隊形でサーブレシーブをしているチームが多かった。攻撃の特徴をチーム別にまとめると,キューバは,ツーセッターシステムを採用し,クイックスパイクとコート両サイドからの平行トスの攻撃を行っていた。ロシアは,2人のエースアタッカーによるオープン攻撃を中心にして,センタープレーヤーがクイックスパイクやワイド攻撃を行っていた。ロシアのオープントスは非常に高く,レフトフロントスパイクのトスボール最高値は平均5.74mであった。ブラジルは,バックアタックを打つ選手が3人おり,男子のコンビ攻撃パターンに類似した4人攻撃を行っていた。中国は,ワイド攻撃とクイックスパイクを同時に,あるいは2種類のクイックスパイクを同時に使用するコンビ攻撃を多用していた。 男子には,4人のアタッカーによるコンビネーション攻撃という,トップレベルチームに共通した戦術がある。しかし女子の場合には,男子のような共通のコンビ攻撃は認められなかった。ブラジル女子チームは,男子の攻撃に類似した4人攻撃を行っている。しかし女子バレーボールでは,この攻撃方法が必ずしも決定力が高いとは言えない。女子トップ4チームのコンビ攻撃は,それぞれに独自の特徴を持っていた。これらの結果から考えると,現在のところ,女子の攻撃に関しては,男子の4人攻撃に匹敵するような決定力のあるチーム戦術は無いと言えよう。
|