研究概要 |
ラットの横隔膜を神経支配する運動ニューロン(Phrenic MN)には、常時活動しているrecruitedニューロン(R-MN)と吸息局面に同期した脱分極を示すだけで活動電位は発していないnon-recruitedニューロン(NR-MN)がある。後者のニューロンは呼吸が亢進した時に追加動員されるタイプであると考えられる。本研究は、Young(10週齢)、Old群(1年齢)およびVery Old群(2年齢)、各15〜20匹を対象にして、ニューロンタイプを区別して電気生理学的膜特性および横隔膜の機能形態特性をしらべ、昨年度のデータ(3〜4ヶ月齢)と比較検討した。 1)記録されたMNのうちR-MNの比率は、48%(Young)、33%(Old)および36%(V. Old)であったりR-MNの平均基電流は、4.1+1.4nA(Young)、3.3+1.8nA(Old)および3.2+1.1nA(V. Old)であり、群間に統計的有意差はなかった。一方、NR-MNの平均基電流は、6.6+3.2nA(Young)、5.4+1.9nA(Old)および3.9+1.5nA(V. Old)であり、V. Old群は有意に低下した。さらに、V. Old群のR-MNの平均発射間隔は、他の群に比べ有意に延長しており、不規則な発射が頻繁に認められた。 2)横隔膜の各筋線維タイプの面積占有率は、SO線維=26%(Young),27%(Old)および43%(V. Old)、FOG線維=37%(Young),30%(Old)および30%(V. Old)、FG線維=37%(Young)、43%(Old)および26%(V. Old)であった。V. Old群はFG線維の萎縮、消失にともなうFG線維面積占有率の低下が顕著であり、筋のSlow化が明らかであった。 3)横隔膜の収縮特性は、YoungとOldは統計的有意差は認められなかったが、V. Old群は有意に収縮速度、1/2弛緩時間の延長および20Hz以上での強収縮張力(N/cm2)の低下が認められた。 以上の結果から、横隔膜とその支配運動ニューロンの老化変化が、FG線維とその支配運動ニューロン(NR-MNと予想される)に特に顕著であることを示している。
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