平成12年度においては、随意運動に伴って生じる体性感覚誘発電位の変動をCNV、運動関連脳電位のパラダイムとの比較から検討し、これらの大脳皮質上における脳電位分布とダイポールの推定を行うことを目標として検討を行った。得られた結果は以下の通りであった。 1.拇指による随意的な自発運動を繰り返し行い、この間に体性感覚誘発電位を記録した。その結果、自発的な随意運動においては後期成分同様に早期成分であるN20にも電位のgatingが観察されたが、この内、SubcomponentであるN18とN20では異なった変動が示された。すなわちN18はN20と比較してgatingが緩和され、動作に伴う求心性入力増大が体性感覚誘発電位に存在する可能性が示唆された。 2.自発動作とCNVパラダイムを比較すると、gatingの時間的経過が異なることが確認された。その特徴としては、自発動作ではCNVパラダイムと比較して、かなり早い時点からgatingが生じるのに対してCNVパラダイムでは動作直前までgatingが生じないというもので、このことから中枢レベルの感覚入力に対する興奮性がgating効果と関係することが推察された。 3.gatingに関する頭皮上分布においては、動作支配部位において顕著な結果が得られたが、早期成分と比較して、後期成分では広汎にみられることが特徴であった。しかしダイポールについては、かならずしも明確な差は確認されなかった。 4.以上のことから、随意動作中の体性感覚誘発電位のgatingは早期成分から後期成分に至るまで、階層的な感覚情報処理を反映するものと考察された。今後この具体的メカニズムの可能性についての検討を行う予定である。
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