研究課題/領域番号 |
12680040
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
西村 秀樹 九州大学, 健康科学センター, 助教授 (90180645)
|
研究分担者 |
清原 泰治 高知女子大学, 文化学部, 講師 (00225096)
岡田 守方 高知大学, 教育学部, 助教授 (60160686)
|
キーワード | 宮相撲 / 前相撲 / お好み三番勝負 / 五人抜き / しこ名 / 化粧まわし / 地域的共同性の再生産 |
研究概要 |
本年度は、土佐町相川正木の宮の大会(8月)、本山町上関阿弥陀堂の大会(8月)、土佐町峯石原高峯神社の大会(12月)に出向き、観察・聞き取り調査をおこない、咋年度の予備調査の結果を緻密に裏づけた。また、「しこ名」「化粧まわし」の由来を追った。 (1)運営資金のための寄付金集め、当日の二臓・桟敷づくり、大会の運営・進行、これらはすべて地区総ぐるみで分担しておこなわれた。寄付者の名前は小さな板に書かれ境内に飾られ、寺の住職によってお経が読まれるという、「奉納」の形式がみられた。戦前も現在も、行政とは無関係に、祭礼と結びつきながら地区の熱意によって続けられている"フォーク・ゲーム"なのである。 (2)「前相撲」「お好み二番勝負」「飛びつき五人抜き」といった古くから伝わるやり方-取組のおもしろさをじっくり味わいながら、かつ真に強いのは誰かを見極めていく方法-を残していたのは、阿弥陀堂であった。正木の宮と高峯神社においては、現代的な団体戦の形式をとるに至っていた。 (3)松風、荒岩、月見山、重関、手束弓、岩尾関という「しこ名」を名乗った6人の化粧まわしが見つかった。このうち岩尾関については、三代目が存命で、詳しい話が聞けた。岩尾関の化粧まわしは、二代目の岩尾関の和田亨氏の時代に、土佐町森地区の地主森岡氏と、宇佐屋旅館の主人の二人が「ひいき」となって作成して、二代目に贈ったものであり、昭和10年前後のことである。岩尾関というしこ名は、土佐町溜井の地域住民達が、初代の和田梅治氏の「ひいき」となって命名したものであり、父から子へ、子から孫へと化粧まわしとともに襲名されていった。子孫に強いものがいない場合、血縁にこだわらず他者へと譲られていった。 宮相撲は、地域的共同性の再生産をもたらしていたと考えられる。相撲という力くらべの大会を通して老若男女が共通の時空間へ参加した。夜店が並び、観客は飲食しながら盛んに声援を送った。また、集落間の交流がなされ、男女交際・婚姻の契機が生まれていった。人々は、そうした共通の体験を通じて、日常生活における利害を超越した共同性の感情を確認していったのである。地域社会はこうして編成されていくのである。
|