本年度は、骨格筋内の熱ストレス蛋白質の発現変化を検討する目的で、下記の研究を行った。 1「クレンブテロール投与によるラット骨格筋内の熱ストレス蛋白質の発現変化」 クレンブテロールは、骨格筋の重量を増加させるとともに、筋線維の肥大や速筋化を引き起こすことが知られている。本研究は、クレンブテロール投与による単一筋線維内のミオシン重鎖成分の変化、熱ストレス蛋白質の一種であるHSP72の変化を検討した。実験には雄の成熟Wis tarラット20匹を用い、10匹をクレンブテロール投与群、残り10匹をコントロール(無処置)群とした。実験群には飲料水にクレンブテロールを溶かし(30mg/Liter)これを飲水させた。餌は自由摂取とした。4週間の実験後、両群より下肢骨格筋を摘出した。 クレンブテロール群では、コントロール群に比べ、体重と筋重量(ヒラメ筋、足底筋、腓腹筋)の有意な増加が認められた。筋線維横断面積では、全ての筋において速筋線維の選択的な肥大がみられた。また、ヒラメ筋では速筋繊維の占有率の増加が認められると共に、部分的に枝分かれした筋線維(スプリットファイバー)が認められた。ヒラメ筋単一筋線維のミオシン重鎖成分は、遅筋型のMHCIを含む筋線維が減少し、側筋型のMHC IIxが新たに発現すると共に、MHC混在型の筋線維が有意に増加した。さらに、HSP72発現量は、足底筋と腓腹筋では変化はなかったが、ヒラメ筋では有意な減少が認められた。 以上の結果から、クレンブテロール投与により、特に遅筋のヒラメ筋では、組織レベルと単一筋線維レベルから速筋化が確認され、同時にHSP72発現量は減少することが明らかとなった。これらの変化の関連やそのメカニズムの解明は今後の課題である。
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