「ラット骨格筋内のストレス蛋白質の発現変化」という研究課題で、平成12年度と13年度の2年間、以下の2つの実験を行い貴重な研究成果を得ることができた。 (1)ラットヒラメ筋における筋線維再生過程の熱ショックタンパク質(HSP)の変化ヒラメ筋内に局所麻酔薬であるブピバカインを注入し筋線維を破壊した後、回復4週目までのHSP72の発現変化を検討したところ、注入直後ではHSP72は激減しており、その後4週目までにその発現量は徐々に増加した。HSP72の増加と対応して、筋線維横断面積も徐々に増加するのが認められた。このことから、HSP72の発現は、筋線維の成長に伴い増加することが明らかとなった。 (2)クレンブテロール投与によるラット骨格筋のHSPの変化 クレンブテロールは筋を肥大させ、同時に筋を速筋化させることが知られている。4週間のクレンブテロール投与がラット下肢骨格筋の特性およびHSPに与える影響を検討した結果、ヒラメ筋、足底筋、腓腹筋で筋重量の増加と速筋線維の有意な肥大が観察された。またヒラメ筋では速筋線維占有率の増加がみられた。しかしながらヒラメ筋のHSP72は有意に減少し、腓腹筋でも減少傾向が認められた。これらの結果から、HSP72は筋線維の肥大には直接関与しておらず、むしろ筋線維タイプの変化に対応してその発現量が変化するのではないかと推察された。
|