研究目的:オリンピック開会式の芸術プログラムの実際とテレビ映像および記録映画において、そこで表現されている文化的な意味を分析・記述・解釈し、明らかにすることが目的である。 1.2000年シドニー五輪開会式を現地調査し、芸術プログラムを取材した。開会式のテレビ放映の様子を日本と、米、加、豪に渡って収集し、コメント内容を概観した。その結果、グローバルカルチャーであるオリンピックの芸術プログラムにも、開催都市のローカリズム、地域文化、普遍的芸術文化などが混在していること、及び各国のテレビ放映にナショナリズムが強固であることが明らかになった。 2.2002年ソルトレイク冬季五輪開会式を現地調査し、芸術プログラムを取材した。開会式のテレビ放映の日米比較によって、米国の愛国主義およびジンゴイズムの強固さが明らかになった。以上から、オリンピックの開会式における芸術及び文化プログラムは、その開催都市がおかれている時代的、社会的文脈に応じて、普遍的芸術表現と国家主義や愛国主義が反映されていることが明らかにされた。 3.2000年シドニー五輪の公式記録映画及び2002年ソルトレイク公式記録映画を入手し、そこに描かれている開会式の文化プログラム関連の映像から、後世にどのような記憶が伝えられていくか解釈を進めた。現在までに得られた結果は、記録映画には製作者および企画者たちのオリンピズム観が反映されていること、特に制作者であるBud Greenspan監督のオリンピックロマンティシズムが強固に反映されていること、及びアメリカの視聴者を念頭に置いた物語構成が取られていることが明白であった。 4.今後の展望として、開会式の参加者へのインタビュー調査とその開会式をテレビで観た視聴者との比較調査の必要性、及び開催国や開催都市のオリンピック教育と開会式の文化プログラムの関連性について明らかにする必要性が示唆された。
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