研究概要 |
平成12年度より自宅で実施可能な運動プログラム(home-based exercise program)を作成し、地域在住の高齢者を対象に短期間(3ヶ月間)指導し、この機能的体力の変化を中心にその有効性を検討してきたが,平成13年度は本運動プログラムの効果が継続するものかについて焦点をあてて2年間追跡調査した。本プログラムは、最終的にはウエルラウンドエクササイズを実施することをねらいとするが,今回は主に筋力強化に主眼をおいたプログラムを用いた。運動プログラムは,基本的には自宅で実施する運動方法を用いたが、運動を正しく実施するために、公民館などを利用し,定期的に指導した。運動は歩行,バンドによる筋力づくり,ストレッチを用いたが,教本,ビデオテープを併用し正しい方法を習得させた。12年度は週1回の指導を試みたが,今年度は月に2日として実施した。2年間に亘り追跡調査できた被験者は22人(平均年齢69±6歳,男11人,女11人)であった。2年間に及ぶ自宅型運動により筋力(Chair Stand, Arm Curl)は向上し,かつ維持していることが明らかとなった。一方,柔軟性(Sit&Reach, functional reach)や動的バランス(Up&Go,閉眼片足立ち)は12週間における短期間に顕著な改善が示された(P<0.05)ものの2年後有意に低下していた。また,12分間歩行距離などは効果が消失している傾向がみられ,安静血圧(収縮期,拡張期),体重は増加していた。本高齢者用家庭型運動プログラムは筋力強化に有効な手段になりうるものとみられたが,エアロビクスや柔軟性,バランスに関しては運動量や質の確保などに問題点が明らかとなり,ウエルラウンドエクササイズという観点からの家庭型運動の限界と有効範囲が示されるとともにより効果的な運動方法の検討が求められるものとみられた。
|