本研究は、看護大学の学生について在学中の体格・体力の推移を調査するとともに、看護実習中の身体的負担度と体格・体力との関連を検討することにより、看護職従事者として備えておくべき体力要素とその水準を明らかにしていくための基礎資料を得ようとするものである。本年度は、昨年度調査した学生の1学年下の学生を対象として協力者を募り、平成12年秋から平成13年春にかけての看護実習期間(およそ50日)を経た後に、昨年度と同様に身体の構造(体格、身体組成、骨強度)と機能(脚伸展パワー、有酸素性パワー、握力、背筋力、垂直跳び、長座体前屈)の測定を行うと同時に、看護実習期間における生活習慣、体調や身体的負担度(倦怠感、疲労感、痛みや異常を来す病的症状などの程度)及び体力に対する自己評価などについての質問紙調査を行った。協力学生数は女子66名であった。測定・調査結果を分析したところ、一日の実習後の疲労の程度が少ない群は、多い群より脚伸展パワーが有意に優れており、実習中の自覚症状を聞く51項目で「しばしば」もしくは「いつも」あったと応えた項目数が10以上あった群は、そうでない群に比べて、左手握力と背筋力が強い傾向がみられた。一方で、実習期間中の疲労感の大きい群の方が筋量が多いなど、必ずしも実習中の疲労度や自覚症状と体格・体力との関係は明白ではなかった。ただし、学生は看護実習を行っていく上で体力は非常に必要(60名)あるいは、どちらかといえば必要(6名)だと思っており、特に必要な体力要素としてはスタミナ(全身持久力)という答えが最も多く、次いで腕力、脚力の順であった。引き続き来年度も同様の測定・調査を行って標本数を増やし、検討を重ねるつもりである。
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