本研究の目的は、将来の看護職従事者予備軍である看護大学生の体格・体力と看護実習中の身体的負担度と体格・体力との関連を検討することにより、看護職従事者として備えておくべき体力要素とその水準を明らかにしていくための基礎資料を得ることである。平成9〜11年度本学入学生女子の中から、本研究に協力することに同意した者158名(H9年度生46名、H10年度生66名、H11年度生46名)を対象に各年度の学生が領域別看護実習を終えた時点(4年次6月)で、体格(身長、体重、BMI)・身体組成(%fat、LBM)・体力(無酸素パワー、有酸素パワー、握力、背筋力、垂直跳び、長座位体前屈)・骨強度(踵骨)の測定及び看護実習期間中の体調や疲労度に関する質問紙調査を行った。調査項目は、睡眠、食欲、排泄など日常生活習慣に関する項目、実習中の自覚症状(治療を要すほどではないが不快を伴う症状。倦怠感、疲労感、めまい、吐き気など)と痛みや異常を来す病的症状(頭痛、腹痛、腰痛、生理不順、発熱など)などで、尺度スケールにより重篤度を評価した。3学年のデータを総合して分析を行ったところ、実習中疲れる原因であると思う項目の合計数と脚伸展パワーとの間に負の相関関係が認められた(r=-0.16、p<0.05)。また、一日の実習後の疲労感が低い群では脚伸展パワーの平均値が有意に高く、最も大変だった実習期間中の疲れがいつも残っていると答えた群は、そうでない群に比べて背筋力の平均値が有意に低かった。学生の看護実習中に必要とされる体力要素と看護士として勤務する場合に必要となる体力要素とは全く同一ではない可能性があるものの、本研究の結果、看護職従事者になることを目指す学生にとって看護実習を無理なく遂行していくためには、一定水準の脚力保持が必要であることが示唆され、その水準は体重当たりおよそ18〜19ワットと推定された。
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