研究概要 |
本年度(2年計画の1年目)は,子どものデータ収集を行うための,測定機器を含む実験環境を整備することを目的とし,予備実験的に成人を対象としたデータを収集しつつ,機器の改良等を行った.複数部位を用いることによる動作パフォーマンスの変化について,これまでにもタッピング動作を用いて実験的研究を行ってきた.しかしながら,特に子どもを対象とした場合,課題とする動作そのものに変動が生じてしまい,必ずしも条件による動作パフォーマンスの違いを特定しにくい状態であったことが問題であった.そこで,ある程度動きを制限した形の動作を用いて行うことを意図し,固定バーの把握を課題動作として試みることとした.それにあたり,予備実験を兼ね,対照として行った成人の研究結果を本年度の概要としてまとめる. 把握動作を用いて,音刺激に対する単純反応時間を,片側単独(利き側,非利き側)および両側同時条件でくり返し測定し,同側における条件による違いをみた.13名の被検者中1名を除き両側時に反応時間の延長傾向がみられ,内利き側5例については統計的に有意な差であった.この反応時間に関する両側性機能低下のメカニズムについては,両側反応における左右の反応を統合する中枢が右半球にあり,また両手で同時に反応するためには,左右の手の反応を統合する過程が必要なため片手より遅れると考えられている.しかしながら,数例の子どもを対象とした予備実験では,成人ほどの明確な違いが見出せず,動作の調節系のメカニズム自体も成人とは異なることも予想される.次年度はさらに,子どもを対象とした実験を行うために,実験手順および測定のための装置に改良を加えなければならないことも示唆されたが,子どもを対象とした実験を重ね,発達的な観点からのまとめを行う予定である.
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