研究概要 |
本年度(2年計画の2年目)は,昨年度作成,改良した測定機器(グリップ用力量計)を用いて実験を行なった.子どものデータを収集し,成人データとの比較により子どもの動作調整能の特性を検討した. グリップ(把握)動作を用いて,音刺激に対する単純反応時間を,一側単独(利き側,非利き側)および両側同時条件それぞれ測定し,同側における一側,両側同時条件による変化をみた.本実験の結果からは,子どもにおいては成人と異なった傾向がみられた.すなわち,同側において,「一側単独」,「両側同時」による反応時間を比較すると,成人では全般に左右ともに「両側同時」反応が「片手単独」より遅くなる傾向がみられ,その傾向は利き側のほうがより大きかった(昨年度報告).それに対し子どもでは,利き側あるいは反応時間の早い側では「両側同時」が遅くなる傾向もみられたが,非利き側あるいは反応時間の遅い側では逆に「両側同時」が「一側単独」より早くなる傾向にあった.また,すばやく反応動作を行なう場合の発揮出力(グリップ力)についてみると,成人では個人によって力の絶対値の大きさには違いあるものの,両側同時動作で一側単独より力は小さくなった.それに比して子どもでは全般に発揮出力が大きく,両側同時動作で出力が小さくなるものはあまりみられなかった.神経系の働きが発達過程にある子どもでは,利き側でない,あるいは反応が遅い側については,反対側同名筋において同時に力を発揮することで反対側への抑制よりもむしろ促通現象が起こる可能性があると考えられた.また,本研究のまとめにあたっては,これまでの関連実験データを加え考察を行なった. 本研究においては,成人との比較により子どもの特性を推測するにとどまり,子ども内で年齢差からみた発達特性を追うことはできなかった.今後の課題とされるところある.
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