研究概要 |
加齢にともなって心臓迷走神経機能の減少が、有酸素運動者で緩徐であるといわれている。そこで我々は次の2つの仮説を検証した。一つは加齢とともに減少する心臓迷走神経活動を運動停止後の回復心拍減衰反応がら心臓迷走神経再活動能についてであり、もう一つメソサイクルの運動を長期的に実施て入る運動者の反射的心臓迷走神経再活動能についての検証である。 被験者は健康な22人の児童(8-9歳)と98人の成人(若年,19-39歳;中年,40-59歳,高齢者,60-79歳)を対象とした。成人は週に1-2回の運動習慣を持っている場合と、ほとんど運動しない被験者群にわかれた。測定はボルグ係数10-11の軽負荷自転車運動を5分間実施し、運動停止後の回復心拍減衰時定数(HR_<TC>)と5秒間の回復心拍減衰率(HR_<DR>)を計測した。その結果、長期的メソサイクル運動習慣のある被験者はHR_<TC>とHR_<DR>の両方に加齢にともなう遅延や減少が緩徐に変化していた。しかし非運動習慣者では加齢にともなって大きな遅延や減少が観察された。児童のHR_<TC>は若年群とほぼ同値であったが、HR_<DR>は若年群と比較して著明に速かった。このHR_<DR>の変化は運動停止直後の心拍反応であることから、反射的調節機構を考える上で貴重な情報であると思われる。HR_<TC>とHR_<DR>の両方が速い被験者は心臓迷走神経活動の調節が動脈圧受容反射の感度やcentral commandによって瞬時に行われていることを示唆するものである。したがって長期的メソサイクル運動習慣は心臓迷走神経活動の調節能の改善に寄与していることが示唆された。
|